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  • 遥か刻で咲いていた思ひ出を抱きしめては。
    色褪せぬ、と切なくなって行く季節。

    清か水に映りしは枯れ尾花のうら寂し。
    黒髪揺らす時つ風が冷たくて。

    幼し頃、無邪気なあなた。雪仏の傍で。
    片笑む姿、思ひ出しては恋しくて。

    はらり、と———。

    み雪の舞い散る度に思ひ出す、名も知らぬその顔。

    嗚呼、私に残したこゝろの一枚あたたかく。

    はらり、と———。

    み雪の舞い散る度に思ひ出す、名も知らぬその顔。

    嗚呼、ぬくもり残して小さくなってく。
    雪もよに消えてく。

    白む景色、悴んだ心。

    ———斑雪の如く。

    藪柑子は赤く実る、風に揺れて泣く———。

    幾返り日々重ねて、重ねる度冴え凍る。
    震える体を温める術はなく。

    霞の奥でやにわに滲む袖口の淡色。
    唐傘の下、洟啜り陰る泣き顔。

    はらり、と———。

    み雪の舞い散る度に思ひ出す、名も知らぬその顔。

    嗚呼、私に残したこゝろの一枚あたたかく。

    はらり、と———。

    み雪の舞い散る度に思ひ出す、名も知らぬその顔。

    嗚呼、ぬくもり残して小さくなってく。
    雪もよに消えてく。

    もう一度、一度だけでいい。

    名も知らぬけれど愛しあの人に、会わせてくれまいか。

    ———藪柑子は赤く実る、揺れるこゝるの一枚。

    終わり
  • [00:18.00]遥か刻で咲いていた思ひ出を抱きしめては。
    [00:25.43]色褪せぬ、と切なくなって行く季節。
    [00:45.49]
    [00:45.54]清か水に映りしは枯れ尾花のうら寂し。
    [00:52.45]黒髪揺らす時つ風が冷たくて。
    [00:59.12]
    [00:59.18]幼し頃、無邪気なあなた。雪仏の傍で。
    [01:05.73]片笑む姿、思ひ出しては恋しくて。
    [01:13.60]
    [01:13.65]はらり、と———。
    [01:14.49]
    [01:14.54]み雪の舞い散る度に思ひ出す、名も知らぬその顔。
    [01:20.70]
    [01:20.76]嗚呼、私に残したこゝろの一枚あたたかく。
    [01:27.20]
    [01:27.26]はらり、と———。
    [01:28.10]
    [01:28.15]み雪の舞い散る度に思ひ出す、名も知らぬその顔。
    [01:34.24]
    [01:34.29]嗚呼、ぬくもり残して小さくなってく。
    [01:38.26]雪もよに消えてく。
    [01:41.10]
    [01:41.16]白む景色、悴んだ心。
    [01:45.35]
    [01:45.40]———斑雪の如く。
    [01:55.80]
    [01:55.90]藪柑子は赤く実る、風に揺れて泣く———。
    [02:08.70]
    [02:08.76]幾返り日々重ねて、重ねる度冴え凍る。
    [02:15.29]震える体を温める術はなく。
    [02:21.80]
    [02:21.86]霞の奥でやにわに滲む袖口の淡色。
    [02:28.48]唐傘の下、洟啜り陰る泣き顔。
    [02:36.48]
    [02:36.53]はらり、と———。
    [02:37.23]
    [02:37.28]み雪の舞い散る度に思ひ出す、名も知らぬその顔。
    [02:43.50]
    [02:43.55]嗚呼、私に残したこゝろの一枚あたたかく。
    [02:49.80]
    [02:49.86]はらり、と———。
    [02:50.89]
    [02:50.94]み雪の舞い散る度に思ひ出す、名も知らぬその顔。
    [02:57.15]
    [02:57.20]嗚呼、ぬくもり残して小さくなってく。
    [03:01.00]雪もよに消えてく。
    [03:03.86]
    [03:03.91]もう一度、一度だけでいい。
    [03:07.80]
    [03:07.86]名も知らぬけれど愛しあの人に、会わせてくれまいか。
    [03:27.00]
    [03:28.00]———藪柑子は赤く実る、揺れるこゝるの一枚。
    [03:42.70]
    [03:42.80]終わり