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  • 7.エルの天秤

    殺人…竊盜…誘拐…密売…

    ──悪魔に
    魂を売り渡すかのように 金になる事なら何でもやった
    問うべきは手段では無い その男にとって目的こそが全て
    切実な現実 彼には金が必要だった…

    傾き続けてゆく天秤 その左皿が沈み切る前に
    力づくでも浮き上がらせるだけの金が 右皿には必要だった…
    そして…その夜も天秤は仮面を躍らせる……

    闇を纏うように 夜の靜寂を探り 瞳と瞳(目と目)を見つめ合って
    夢想的(Romantic)な月燈りに そっと唇重ね 息を潛めた…

    慌しく通り過ぎる 追っ手達を遣り過ごし 手と手を取り合って
    戯曲的(Dramatic)な逃避行に 酔った二つの人生(いのち) 愛に捧げた…

    さよなら…(権力の走狗どもには便利なカード)
    さよなら…(娘を売れば至尊への椅子は買える)

    身分違いの戀 許されないと知っても ♂(お)と♀(め)は惹かれ合った
    嗜虐的(Sadistic)な貴族主義を 蹴って檻を抜け出す 嗚呼それは悲劇…

    運命の遊戯盤(Board)の上で 支配力を求めて 生と死は奪い合った
    徹底的(Drastic)な追悼劇を 笑う事こそ人生 嗚呼むしろ喜劇…

    さよなら…(コインで雇った者が裏切る世の中)
    さよなら…(他人ならば不條理と責めるは慘め)

    楽園への旅路 自由への船出 逃走の果てに辿りついた岸辺
    船頭に扮した男が指を鳴らすと 黒衣の影が船を取り囲んだ……

    「お帰りの船賃でしたらご心配なく、既に充分すぎるほど戴いておりますので、けれども彼は、ここでさよなら」

    「殘念だったね…」

    「娘さえ無事に戻るならばそれで良い、使用人(オトコ)の方など殺(バラ)しても構わんわ」

    一度も眼を合わせずに伯爵はそう言った… 金貨(コイン)の詰まった袋が機(テーブル)叩いた…

    いつも人間(ひと)は何も知らない方が幸福(幸せ)だろうに
    けれど他人(ひと)を求める限り全てを知りたがる
    ──何故破滅へと歩み出す?

    華やかな婚禮 幸せな花嫁 運命の女神はどんな腳本(シナリオ)を好むのか…
    虛飾の婚禮 消えた花嫁 破滅の女神はどんな綻びも見逃さない…

    嗚呼…燃えるように背中が熱い その男が伸ばした手の先には何かが刺さっていた
    嗚呼…緋く染まった手を見つめながら 仮面の男は緩やかに崩れ落ちてゆく…

    嗚呼…その背後には娘が立っていた 凄まじい形相で地に臥せた男を凝視していた
    嗚呼…一歩後ずさり何か叫びながら 深まりゆく闇の彼方へと走り去ってゆく…

    ──徐々に薄れゆく意識の水底で 錆付いた鍵を摑もうと足掻き続ける
    扉は目の前にある 急がなければ もうすぐ もうすぐ約束した娘の──
  • [00:01.360] 7.エルの天秤
    [00:03.340]
    [00:03.600]殺人…竊盜…誘拐…密売…
    [00:07.360]
    [00:08.200]──悪魔に
    [00:08.590]魂を売り渡すかのように 金になる事なら何でもやった
    [00:12.800]問うべきは手段では無い その男にとって目的こそが全て
    [00:17.380]切実な現実 彼には金が必要だった…
    [00:20.790]
    [00:21.850]傾き続けてゆく天秤 その左皿が沈み切る前に
    [00:26.140]力づくでも浮き上がらせるだけの金が 右皿には必要だった…
    [00:30.750]そして…その夜も天秤は仮面を躍らせる……
    [00:34.530]
    [00:46.120]闇を纏うように 夜の靜寂を探り 瞳と瞳(目と目)を見つめ合って
    [00:57.460]夢想的(Romantic)な月燈りに そっと唇重ね 息を潛めた…
    [01:09.410]
    [01:09.789]慌しく通り過ぎる 追っ手達を遣り過ごし 手と手を取り合って
    [01:22.900]戯曲的(Dramatic)な逃避行に 酔った二つの人生(いのち) 愛に捧げた…
    [01:34.180]
    [01:34.500]さよなら…(権力の走狗どもには便利なカード)
    [01:39.759]さよなら…(娘を売れば至尊への椅子は買える)
    [01:45.670]
    [01:46.610]身分違いの戀 許されないと知っても ♂(お)と♀(め)は惹かれ合った
    [01:57.479]嗜虐的(Sadistic)な貴族主義を 蹴って檻を抜け出す 嗚呼それは悲劇…
    [02:09.500]
    [02:09.810]運命の遊戯盤(Board)の上で 支配力を求めて 生と死は奪い合った
    [02:22.220]徹底的(Drastic)な追悼劇を 笑う事こそ人生 嗚呼むしろ喜劇…
    [02:34.180]
    [02:34.450]さよなら…(コインで雇った者が裏切る世の中)
    [02:39.800]さよなら…(他人ならば不條理と責めるは慘め)
    [02:45.740]
    [02:46.690]楽園への旅路 自由への船出 逃走の果てに辿りついた岸辺
    [02:52.940]船頭に扮した男が指を鳴らすと 黒衣の影が船を取り囲んだ……
    [02:58.250]
    [02:58.880]「お帰りの船賃でしたらご心配なく、既に充分すぎるほど戴いておりますので、けれども彼は、ここでさよなら」
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    [03:17.540]「殘念だったね…」
    [03:18.610]
    [03:34.350]「娘さえ無事に戻るならばそれで良い、使用人(オトコ)の方など殺(バラ)しても構わんわ」
    [03:45.930]
    [03:46.510]一度も眼を合わせずに伯爵はそう言った… 金貨(コイン)の詰まった袋が機(テーブル)叩いた…
    [03:58.710]
    [03:59.300]いつも人間(ひと)は何も知らない方が幸福(幸せ)だろうに
    [04:04.740]けれど他人(ひと)を求める限り全てを知りたがる
    [04:10.960]──何故破滅へと歩み出す?
    [04:17.240]
    [04:17.519]華やかな婚禮 幸せな花嫁 運命の女神はどんな腳本(シナリオ)を好むのか…
    [04:23.890]虛飾の婚禮 消えた花嫁 破滅の女神はどんな綻びも見逃さない…
    [04:29.360]
    [04:29.720]嗚呼…燃えるように背中が熱い その男が伸ばした手の先には何かが刺さっていた
    [04:35.350]嗚呼…緋く染まった手を見つめながら 仮面の男は緩やかに崩れ落ちてゆく…
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    [04:42.600]嗚呼…その背後には娘が立っていた 凄まじい形相で地に臥せた男を凝視していた
    [04:47.950]嗚呼…一歩後ずさり何か叫びながら 深まりゆく闇の彼方へと走り去ってゆく…
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    [04:54.560]──徐々に薄れゆく意識の水底で 錆付いた鍵を摑もうと足掻き続ける
    [04:59.940]扉は目の前にある 急がなければ もうすぐ もうすぐ約束した娘の──