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  • その都市の名は、エクリス。
    かつて犯した罪により、永遠に閉ざされた世界。死に往く者が留まる、終焉の都市。
    暗い世界に縫い付けられた無数の影。温度のない息づかい。
    それは、この『死の都市』に迷い込んだ、たくさんの意識のかけら。
    肉体を失った彼らは、私が見守るこの地で、穏やかに消滅を待っていました。
    語り:中惠光城
    その中に佇むひとりの影。
    彼は次の『私』となるべく、強くエクリスの意思を血に宿して生まれた少年でした。
    エクリスは破壊と解放の力。
    その力が無意識のうちに働いて、大切なものを壊してしまわないように。
    彼は意識の半分をこの都市に封じられていたのです。
    現実での彼は、自分が存在しているという実感が薄く、心は常に遠くにありました。
    ぼんやりとした世界は、どんなことにも興味を持ちづらいものです。
    言われるままに息をしているだけの自分を、誰よりも詰まらない人間だと思うことはありましたが、
    それもまた彼にとってはどうでも良いことでした。
    いずれ『エクリス』を継承すれば、彼の意思は消滅するのだと教えられてきたからです。
    ですから、彼は『エクリス』を何よりも怖れ、激しく嫌悪し、
    『私』の存在をも否定していました。
    幻想と現実の狭間にある、忌まわしい『エクリス』。
    大きな月が照らす死の都市で、運命からの解放を望んだ、彼の名はーー
  • [00:00.00]その都市の名は、エクリス。
    [00:05.92]かつて犯した罪により、永遠に閉ざされた世界。死に往く者が留まる、終焉の都市。
    [00:22.82]暗い世界に縫い付けられた無数の影。温度のない息づかい。
    [00:31.85]それは、この『死の都市』に迷い込んだ、たくさんの意識のかけら。
    [00:40.30]肉体を失った彼らは、私が見守るこの地で、穏やかに消滅を待っていました。
    [00:48.46]語り:中惠光城
    [00:54.95]その中に佇むひとりの影。
    [00:59.67]彼は次の『私』となるべく、強くエクリスの意思を血に宿して生まれた少年でした。
    [01:17.27]エクリスは破壊と解放の力。
    [01:21.95]その力が無意識のうちに働いて、大切なものを壊してしまわないように。
    [01:30.17]彼は意識の半分をこの都市に封じられていたのです。
    [01:38.36]現実での彼は、自分が存在しているという実感が薄く、心は常に遠くにありました。
    [01:49.13]ぼんやりとした世界は、どんなことにも興味を持ちづらいものです。
    [01:56.30]言われるままに息をしているだけの自分を、誰よりも詰まらない人間だと思うことはありましたが、
    [02:04.44]それもまた彼にとってはどうでも良いことでした。
    [02:11.67]いずれ『エクリス』を継承すれば、彼の意思は消滅するのだと教えられてきたからです。
    [02:23.46]ですから、彼は『エクリス』を何よりも怖れ、激しく嫌悪し、
    [02:30.33]『私』の存在をも否定していました。
    [02:39.18]幻想と現実の狭間にある、忌まわしい『エクリス』。
    [02:46.23]大きな月が照らす死の都市で、運命からの解放を望んだ、彼の名はーー