当前位置:首页 > 歌词大全 > 和泉マサムネの休日 ムラマサ編歌词
  • 俺の年下の先輩について話そうと思う
    千寿ムラマサはかつて和泉マサムネの天敵だった
    俺とよく似たペンネーム、よく似た作風、よく似たスキル
    60倍の売り上げ実績を持つ俺よりも更に若い
    レーベル最年少のライトノベル作家
    累計部数1千万部オーバーの怪物
    新人時代の和泉マサムネは何かと彼と比べられ
    大層風当たりの強い日々を過ごしたものだ
    心にいくつものトラウマを刻まれ、いくつもの新企画を潰され
    作家廃業の危機にさえ追い込まれた
    あいつさえいなければって恨んでいた時期もある
    さて、そんなムラマサ先輩とつい先日俺は初めて対面したわけだ
    初めて顔を合わせ、会話をし、対決した
    この時を境にして、俺とムラマサ先輩の関係は大きく変わった
    俺の天敵、年下の先輩、千寿ムラマサは、着物が似合う14歳の女の子だったのだ
    ムラマサ先輩とはどんな人なのか、改めてそう聞かれるとちょっと困ってしまう
    そうだな、これはこの間先輩といっしょにファミレスに入った時のことなんだが
    ムラマサ先輩、何食べる?
    先輩?おーい先輩、せんぱっ
    よし!
    マサムネ君、どうした?
    それはこっちのセリフだ
    どうしたんだ一体、いきなり大声を出してさ
    ああ、決めたぞマサムネ君
    おお、注文を決めるくらいで何大げさな
    私は恋人を殺す
    楽しそうに何を言ってんだ先輩
    いやだ、殺すですって
    事情のもつれかしら
    周囲の目が痛い
    何って、私が今書いているバトル小説の話だが
    知ってるよ、ヒロイン、主人公の恋人な
    でも、ほかの人にはそう聞こえてねえから
    止めてくれるな、熟慮の末の結論なんだ
    いやそうじゃなくてね
    こうなったからにはやつはもう殺すしかない
    できる限り残忍な方法でだ
    むしろ君を兇器の専門家と見込んでアドバイスをもらいたい
    人体を派手に八つ裂きにするためにはどのような刃物を使用すべきだろう、
    まじでやめよ、ここ俺んちの近所なんだぞ
    いかん、先輩の魅力をアピールしようと思ったのに
    なんか違うところが目立ってしまった
    ええと、そうだな、先輩のいいところ、いいところ
    ううん、美人で格好良くて着物が似合ってて
    透き通るような肌の色とか色っぽい首筋とか
    あっ、あと、意外と着やせするタイプで胸が......
    って、外見ばっかりだな
    兄さんのエッチ
    脳内の妹から怒られてしまったので違う方向に行こう
    物凄く小説を書くのがうまい
    これはもう言ったか
    ならこれだ
    千寿ムラマサ先輩はとんでもなく大物なんだ
    こんなエピソードがあった
    その日は我が家のリビングで先輩と映像作品の鑑賞会をしていた
    じゃあ先輩、感想を聞かせてくれ
    ええと、最初に見たドラマ、どうだった?
    普通
    そっか
    じゃあ、次に見た魔法少女アニメは
    普通かな
    なるほど
    じゃあ、三番目に見た特撮は
    舞台がうちの近所だった
    解説しよう
    ムラマサ先輩は本屋に売っている小説を読んでも
    一部の例外を除きまったく面白く感じないらしい
    じゃあ、小説以外だとどうなんだろうというのも
    クリエイターって良くも悪くもいろんな作品の影響を受けて学び成長していくものじゃんか
    もちろん影響を受けるのは自分が好きな作品たちなわけで
    あんなに面白い小説を書く先輩が
    自分が楽しめる僅かな例外だけに影響を受けてきたとはちょっと思えないのだ
    って、本人に聞いてみたんだよ
    そしたら、こんな答えが帰ってきた
    別にまったく楽しめないわけじゃない
    それに私が個人的に楽しめるかどうかとその作品から学べるかどうかはまた別の話だ
    自分が面白いと思わない作品からも学んでいるってことか
    とはいえ正直、ちょっとした食わず嫌いみたいになっているところがあるんだ
    アニメにせよ映画にせよ、一定時間画面の前にいなくてはいけないところが苦手でね
    そういうことなら、先輩、うちで見てみる?
    資料用のブルーレイ作品がけっこうあるんだ
    君が隣でいっしょに見てくれるのなら
    そういうわけで、さっきから先輩と二人
    二人がけのソファーに並んで座って映像作品を見まくっていたってわけ
    聞いてのとおり、先輩の反応は芳しくない
    やっぱダメか
    どれも俺が面白いと感じた作品なんだけど
    いやそうでもない、さほど悪くない作品もあったぞ
    まじで?どれ?
    最後に見たライトノベル原作のアニメ
    はぁ?えっ、いや、それって
    うん、なかなかのものだった
    まさか私がそう思えるような作品が今まさに放送中だったとはな
    知らなかった
    原作をすぐに読んでみたい、なんて作者だ
    あんただあんた
    あんた氏という名前
    あのアニメの原作者は先輩だ
    私?
    これ、この人、自慢するためにとぼけてるわけじゃないんだぜ
    本気で言ってるんだぜ、信じられるか、俺も最初はびっくりしたよ
    何せこの人、小説家のくせについ最近まで自分が書いた小説のタイトルを知らなかったんからな
    そうだよ、幻想妖刀伝、この前新刊脱稿したばっかだろう
    タイトルを覚えたって言ってたよな
    幻刀?このアニメがか
    確かに似ているような気もするが、内容が違うじゃないか
    私が書いたのはこういう話じゃないぞ
    あんたが監修してねえからだろう
    原作とは違うオリジナルストーリーになっているんだ
    うん、そういうものか
    うわ、すっげえどうでも良さそう
    監修ね、私が小説を書く時間を減らさなくちゃいけなくなるような仕事をやるわけないだろう
    まあ、先輩はそう言うわな
    ああ、しかし幻刀のアニメって今放送中だったんだな
    もう終わってるから、これ録画だから
    この人のファンが聞いたら、盛大にずっこけてしまいそうだ
    千寿ムラマサ先輩は小説を書くこと以外ほとんど興味がない人なんだ
    夢は世界で一番面白い小説を書くこと
    だからメディアミックスへの対応がこうなってしまうのも仕方がない
    とまあ、お聞きのとおり大物といえば大物だろう
    ああ、どうも先輩のイメージが上がった気がしない
    つーか俺先輩と会うたびに大声で突っ込んでばかりのような
    いやいや違うな、そうじゃないときだってあったはずだ、思い出せ俺
    そう、あれは九月頃だったか
    その日、ムラマサ先輩は我が家へ遊びに来ていた
    エルフと合流して三人で出かける予定だったのだが
    ごめん先輩、エルフのやつ寝坊して今起きたって
    もう少し待っててくれないか
    もちろんいいとも、ああお構いなく
    放っておいてくれれば私はここで何時間も小説を書いているから
    そういうわけにはいかないよ
    せっかくだからおしゃべりしないか
    愛するマサムネ君がそういうのなら是非もない
    君は世界で唯一私が執筆よりも優先するものなんだ
    愛するって......
    (/ω\)
    自分で言ってて恥ずかしかったんだな
    10秒ほど待ってくれ
    さて、どんなおしゃべりをしようか、後輩
    今更格好つけても遅いぞ、先輩
    さっきの恥じらう姿をなかったことにしようとしてるだろう
    私たちは小説家なのだし
    共通の話題といえば、やはり創作訓練になるのかな
    涼しい顔でごまかしやがって
    まあ乗ってやるけどさ
    そういえば先輩の書いてる幻刀で次の巻辺りでヒロインが死ぬって言ってたけど
    そのあとどうやって展開していくんだ?
    次の次の巻で生き返るぞ
    そんな大事なネタバレを軽く明かすなよ
    作者なんだから、もうちょっと読者に気を使った返答をだな
    この人に言うだけ無駄か
    想定読者はあくまで自分自身でほかは目に入っていないのだから
    興が乗った
    よし、君になら話してもいいだろう
    実は主人公には秘められた力が眠っていて
    それによってヒロインを死から蘇らせるのだ
    ネタバレやめろって言ったの、聞いてなかっただろう
    そうつっこむことが出来なかったのは、自分の作品の話をする彼女がとても楽しそうだったから
    俺は笑って問い返す
    秘められた力って今まで使ってた能力とは別なの?
    いや、今まで使っていたのは真の力の片鱗でしかない
    完全に覚醒した主人公は作中でも最強クラスの存在となる予定だ
    随分先の話だが
    主人公の覚醒イベントか、定番だな
    何巻くらいでやる予定なんだ?
    100巻
    100巻!?
    まじで言ってんのかこの人
    ラノベで100巻とか途方もない数字だ
    ちなみに先輩、何巻まで続けるつもりなの?
    250巻までは構想が出来ている
    完結まであと60年ぐらいかかるな
    初期から追ってる読者がだいぶ死ぬぞ
    俺も頑張って長生きしないと
    最終巻をまごにプレゼントしたいと思っているんだ
    そりゃあ、壮大な夢だな
    ありがとう、君のおかげだ
    どういう意味?
    気にするな、こちらの話だ
    そっか
    幻刀をずっと続けていくつもりなのは分かったけど、もちろんほかの作品も書くんだろう
    そのつもりだ、バトル小説だけじゃなくて、今はいろいろなジャンルに挑戦てみたいと思っているよ
    例えば、ラブコメとか
    そういえばこの間、先輩はラブコメ小説を書いていたよな
    俺と先輩をモデルにしたやつ
    う、うん
    初めてのジャンルを書いてみてどうだった?
    難しいな、恋愛は
    だからこそとてもやりがいがある
    ムラマサ先輩はそう言って笑った
    うまくいかなかったことを楽しんでいるかのように
    私はね後輩
    今まで恋愛ものを面白いと思ったことは一度もなかった
    マンガでも小説でも、映画でもアニメでもだ
    このジャンルでは自分の琴線に触れる物語とひと作品たりとも出会えなかった
    登場人物の誰にも共感出来なかったんだよ
    愛だの恋だの、好きだの嫌いだの
    まったくピンとこないんだ
    ちっとも興味が持てない
    恋をしているやつと感情を共有できなかった
    きっと私には恋愛ものを楽しむ素養がなかったんだな
    だから、恋愛ものなんてつまらないと決めつけて
    ラブコメ小説を書くという君に怒ったんだ
    先輩は
    マサムネ君、恋愛って面白いな
    直前までのまるで逆のことを言った
    好きな人のことを考えるだけでわくわくする、ドキドキする
    その気持ちが今の私にはよくわからん
    先輩
    今ならすっごく面白い恋愛小説が書けそうだ
    いつかまた読んでくれるだろうか
    うん、ちゃんと読むよ
    心を込めて返事をする
    きっと彼女が綴る恋愛小説はとんでもない最高傑作になるだろうから
  • [00:02.737]俺の年下の先輩について話そうと思う
    [00:06.297]千寿ムラマサはかつて和泉マサムネの天敵だった
    [00:11.555]俺とよく似たペンネーム、よく似た作風、よく似たスキル
    [00:17.019]60倍の売り上げ実績を持つ俺よりも更に若い
    [00:21.405]レーベル最年少のライトノベル作家
    [00:24.551]累計部数1千万部オーバーの怪物
    [00:28.765]新人時代の和泉マサムネは何かと彼と比べられ
    [00:33.181]大層風当たりの強い日々を過ごしたものだ
    [00:37.530]心にいくつものトラウマを刻まれ、いくつもの新企画を潰され
    [00:42.784]作家廃業の危機にさえ追い込まれた
    [00:46.260]あいつさえいなければって恨んでいた時期もある
    [00:51.484]さて、そんなムラマサ先輩とつい先日俺は初めて対面したわけだ
    [00:58.444]初めて顔を合わせ、会話をし、対決した
    [01:03.459]この時を境にして、俺とムラマサ先輩の関係は大きく変わった
    [01:09.918]俺の天敵、年下の先輩、千寿ムラマサは、着物が似合う14歳の女の子だったのだ
    [01:20.859]ムラマサ先輩とはどんな人なのか、改めてそう聞かれるとちょっと困ってしまう
    [01:29.707]そうだな、これはこの間先輩といっしょにファミレスに入った時のことなんだが
    [01:38.973]ムラマサ先輩、何食べる?
    [01:43.270]先輩?おーい先輩、せんぱっ
    [01:48.212]よし!
    [01:51.135]マサムネ君、どうした?
    [01:53.277]それはこっちのセリフだ
    [01:55.535]どうしたんだ一体、いきなり大声を出してさ
    [01:59.054]ああ、決めたぞマサムネ君
    [02:02.282]おお、注文を決めるくらいで何大げさな
    [02:05.970]私は恋人を殺す
    [02:08.601]楽しそうに何を言ってんだ先輩
    [02:10.801]いやだ、殺すですって
    [02:12.458]事情のもつれかしら
    [02:15.309]周囲の目が痛い
    [02:17.318]何って、私が今書いているバトル小説の話だが
    [02:20.796]知ってるよ、ヒロイン、主人公の恋人な
    [02:23.806]でも、ほかの人にはそう聞こえてねえから
    [02:26.122]止めてくれるな、熟慮の末の結論なんだ
    [02:29.050]いやそうじゃなくてね
    [02:31.440]こうなったからにはやつはもう殺すしかない
    [02:34.421]できる限り残忍な方法でだ
    [02:38.207]むしろ君を兇器の専門家と見込んでアドバイスをもらいたい
    [02:42.408]人体を派手に八つ裂きにするためにはどのような刃物を使用すべきだろう、
    [02:47.743]まじでやめよ、ここ俺んちの近所なんだぞ
    [02:51.728]いかん、先輩の魅力をアピールしようと思ったのに
    [02:54.609]なんか違うところが目立ってしまった
    [02:57.556]ええと、そうだな、先輩のいいところ、いいところ
    [03:02.742]ううん、美人で格好良くて着物が似合ってて
    [03:07.703]透き通るような肌の色とか色っぽい首筋とか
    [03:11.618]あっ、あと、意外と着やせするタイプで胸が......
    [03:15.481]って、外見ばっかりだな
    [03:17.688]兄さんのエッチ
    [03:19.913]脳内の妹から怒られてしまったので違う方向に行こう
    [03:25.034]物凄く小説を書くのがうまい
    [03:27.505]これはもう言ったか
    [03:29.478]ならこれだ
    [03:30.886]千寿ムラマサ先輩はとんでもなく大物なんだ
    [03:34.477]こんなエピソードがあった
    [03:36.531]その日は我が家のリビングで先輩と映像作品の鑑賞会をしていた
    [03:43.127]じゃあ先輩、感想を聞かせてくれ
    [03:46.621]ええと、最初に見たドラマ、どうだった?
    [03:49.483]普通
    [03:51.005]そっか
    [03:52.336]じゃあ、次に見た魔法少女アニメは
    [03:55.481]普通かな
    [03:57.721]なるほど
    [03:59.453]じゃあ、三番目に見た特撮は
    [04:02.029]舞台がうちの近所だった
    [04:05.706]解説しよう
    [04:07.202]ムラマサ先輩は本屋に売っている小説を読んでも
    [04:10.785]一部の例外を除きまったく面白く感じないらしい
    [04:15.532]じゃあ、小説以外だとどうなんだろうというのも
    [04:19.870]クリエイターって良くも悪くもいろんな作品の影響を受けて学び成長していくものじゃんか
    [04:27.583]もちろん影響を受けるのは自分が好きな作品たちなわけで
    [04:32.195]あんなに面白い小説を書く先輩が
    [04:34.992]自分が楽しめる僅かな例外だけに影響を受けてきたとはちょっと思えないのだ
    [04:41.366]って、本人に聞いてみたんだよ
    [04:44.104]そしたら、こんな答えが帰ってきた
    [04:47.406]別にまったく楽しめないわけじゃない
    [04:51.383]それに私が個人的に楽しめるかどうかとその作品から学べるかどうかはまた別の話だ
    [04:59.384]自分が面白いと思わない作品からも学んでいるってことか
    [05:05.030]とはいえ正直、ちょっとした食わず嫌いみたいになっているところがあるんだ
    [05:10.779]アニメにせよ映画にせよ、一定時間画面の前にいなくてはいけないところが苦手でね
    [05:17.561]そういうことなら、先輩、うちで見てみる?
    [05:21.404]資料用のブルーレイ作品がけっこうあるんだ
    [05:26.000]君が隣でいっしょに見てくれるのなら
    [05:29.847]そういうわけで、さっきから先輩と二人
    [05:33.141]二人がけのソファーに並んで座って映像作品を見まくっていたってわけ
    [05:38.701]聞いてのとおり、先輩の反応は芳しくない
    [05:42.921]やっぱダメか
    [05:44.738]どれも俺が面白いと感じた作品なんだけど
    [05:47.945]いやそうでもない、さほど悪くない作品もあったぞ
    [05:51.772]まじで?どれ?
    [05:53.376]最後に見たライトノベル原作のアニメ
    [05:57.206]はぁ?えっ、いや、それって
    [06:00.688]うん、なかなかのものだった
    [06:03.407]まさか私がそう思えるような作品が今まさに放送中だったとはな
    [06:08.325]知らなかった
    [06:10.014]原作をすぐに読んでみたい、なんて作者だ
    [06:12.686]あんただあんた
    [06:15.494]あんた氏という名前
    [06:17.760]あのアニメの原作者は先輩だ
    [06:21.029]私?
    [06:22.018]これ、この人、自慢するためにとぼけてるわけじゃないんだぜ
    [06:25.834]本気で言ってるんだぜ、信じられるか、俺も最初はびっくりしたよ
    [06:29.586]何せこの人、小説家のくせについ最近まで自分が書いた小説のタイトルを知らなかったんからな
    [06:35.041]そうだよ、幻想妖刀伝、この前新刊脱稿したばっかだろう
    [06:39.874]タイトルを覚えたって言ってたよな
    [06:42.375]幻刀?このアニメがか
    [06:47.739]確かに似ているような気もするが、内容が違うじゃないか
    [06:52.385]私が書いたのはこういう話じゃないぞ
    [06:54.652]あんたが監修してねえからだろう
    [06:57.111]原作とは違うオリジナルストーリーになっているんだ
    [07:00.124]うん、そういうものか
    [07:02.828]うわ、すっげえどうでも良さそう
    [07:06.427]監修ね、私が小説を書く時間を減らさなくちゃいけなくなるような仕事をやるわけないだろう
    [07:14.795]まあ、先輩はそう言うわな
    [07:17.375]ああ、しかし幻刀のアニメって今放送中だったんだな
    [07:22.562]もう終わってるから、これ録画だから
    [07:28.025]この人のファンが聞いたら、盛大にずっこけてしまいそうだ
    [07:33.281]千寿ムラマサ先輩は小説を書くこと以外ほとんど興味がない人なんだ
    [07:39.450]夢は世界で一番面白い小説を書くこと
    [07:44.032]だからメディアミックスへの対応がこうなってしまうのも仕方がない
    [07:48.631]とまあ、お聞きのとおり大物といえば大物だろう
    [07:53.672]ああ、どうも先輩のイメージが上がった気がしない
    [07:57.993]つーか俺先輩と会うたびに大声で突っ込んでばかりのような
    [08:03.213]いやいや違うな、そうじゃないときだってあったはずだ、思い出せ俺
    [08:10.368]そう、あれは九月頃だったか
    [08:14.188]その日、ムラマサ先輩は我が家へ遊びに来ていた
    [08:18.520]エルフと合流して三人で出かける予定だったのだが
    [08:23.751]ごめん先輩、エルフのやつ寝坊して今起きたって
    [08:28.002]もう少し待っててくれないか
    [08:30.114]もちろんいいとも、ああお構いなく
    [08:33.352]放っておいてくれれば私はここで何時間も小説を書いているから
    [08:37.666]そういうわけにはいかないよ
    [08:42.314]せっかくだからおしゃべりしないか
    [08:45.839]愛するマサムネ君がそういうのなら是非もない
    [08:49.438]君は世界で唯一私が執筆よりも優先するものなんだ
    [08:55.051]愛するって......
    [08:58.052](/ω\)
    [09:01.984]自分で言ってて恥ずかしかったんだな
    [09:05.064]10秒ほど待ってくれ
    [09:20.386]さて、どんなおしゃべりをしようか、後輩
    [09:23.937]今更格好つけても遅いぞ、先輩
    [09:27.217]さっきの恥じらう姿をなかったことにしようとしてるだろう
    [09:31.306]私たちは小説家なのだし
    [09:33.833]共通の話題といえば、やはり創作訓練になるのかな
    [09:38.234]涼しい顔でごまかしやがって
    [09:41.215]まあ乗ってやるけどさ
    [09:43.612]そういえば先輩の書いてる幻刀で次の巻辺りでヒロインが死ぬって言ってたけど
    [09:49.806]そのあとどうやって展開していくんだ?
    [09:51.902]次の次の巻で生き返るぞ
    [09:53.876]そんな大事なネタバレを軽く明かすなよ
    [09:56.620]作者なんだから、もうちょっと読者に気を使った返答をだな
    [10:01.664]この人に言うだけ無駄か
    [10:03.919]想定読者はあくまで自分自身でほかは目に入っていないのだから
    [10:09.189]興が乗った
    [10:10.649]よし、君になら話してもいいだろう
    [10:14.173]実は主人公には秘められた力が眠っていて
    [10:17.743]それによってヒロインを死から蘇らせるのだ
    [10:20.455]ネタバレやめろって言ったの、聞いてなかっただろう
    [10:24.049]そうつっこむことが出来なかったのは、自分の作品の話をする彼女がとても楽しそうだったから
    [10:31.230]俺は笑って問い返す
    [10:33.311]秘められた力って今まで使ってた能力とは別なの?
    [10:38.071]いや、今まで使っていたのは真の力の片鱗でしかない
    [10:42.674]完全に覚醒した主人公は作中でも最強クラスの存在となる予定だ
    [10:47.880]随分先の話だが
    [10:49.839]主人公の覚醒イベントか、定番だな
    [10:53.707]何巻くらいでやる予定なんだ?
    [10:55.579]100巻
    [10:56.289]100巻!?
    [10:57.771]まじで言ってんのかこの人
    [10:59.709]ラノベで100巻とか途方もない数字だ
    [11:03.901]ちなみに先輩、何巻まで続けるつもりなの?
    [11:07.837]250巻までは構想が出来ている
    [11:10.709]完結まであと60年ぐらいかかるな
    [11:13.868]初期から追ってる読者がだいぶ死ぬぞ
    [11:16.719]俺も頑張って長生きしないと
    [11:19.037]最終巻をまごにプレゼントしたいと思っているんだ
    [11:24.620]そりゃあ、壮大な夢だな
    [11:30.135]ありがとう、君のおかげだ
    [11:33.647]どういう意味?
    [11:35.523]気にするな、こちらの話だ
    [11:38.808]そっか
    [11:40.558]幻刀をずっと続けていくつもりなのは分かったけど、もちろんほかの作品も書くんだろう
    [11:46.092]そのつもりだ、バトル小説だけじゃなくて、今はいろいろなジャンルに挑戦てみたいと思っているよ
    [11:53.858]例えば、ラブコメとか
    [11:56.526]そういえばこの間、先輩はラブコメ小説を書いていたよな
    [12:00.859]俺と先輩をモデルにしたやつ
    [12:03.202]う、うん
    [12:06.508]初めてのジャンルを書いてみてどうだった?
    [12:11.593]難しいな、恋愛は
    [12:14.957]だからこそとてもやりがいがある
    [12:18.289]ムラマサ先輩はそう言って笑った
    [12:21.284]うまくいかなかったことを楽しんでいるかのように
    [12:25.542]私はね後輩
    [12:28.019]今まで恋愛ものを面白いと思ったことは一度もなかった
    [12:32.986]マンガでも小説でも、映画でもアニメでもだ
    [12:37.429]このジャンルでは自分の琴線に触れる物語とひと作品たりとも出会えなかった
    [12:45.612]登場人物の誰にも共感出来なかったんだよ
    [12:49.978]愛だの恋だの、好きだの嫌いだの
    [12:54.061]まったくピンとこないんだ
    [12:56.446]ちっとも興味が持てない
    [12:58.757]恋をしているやつと感情を共有できなかった
    [13:03.082]きっと私には恋愛ものを楽しむ素養がなかったんだな
    [13:08.143]だから、恋愛ものなんてつまらないと決めつけて
    [13:12.685]ラブコメ小説を書くという君に怒ったんだ
    [13:17.238]先輩は
    [13:18.832]マサムネ君、恋愛って面白いな
    [13:23.042]直前までのまるで逆のことを言った
    [13:26.863]好きな人のことを考えるだけでわくわくする、ドキドキする
    [13:33.051]その気持ちが今の私にはよくわからん
    [13:38.424]先輩
    [13:40.316]今ならすっごく面白い恋愛小説が書けそうだ
    [13:44.703]いつかまた読んでくれるだろうか
    [13:49.511]うん、ちゃんと読むよ
    [13:53.848]心を込めて返事をする
    [13:56.869]きっと彼女が綴る恋愛小説はとんでもない最高傑作になるだろうから