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  • 詩を書いた位では間に合わない
    淋しさが時として人間にはある
    そこを抜け出ようと思えば思う程
    より深きモノに抱きすくめられるのもまたしかりだ
    あらゆる色合いのものの哀れが
    夫々の運を持ちて立ち現れては
    命脈を焦がして尽きるものである時
    いかなる肉親とても幾多の他人のひとりだ
    その死は実に無残ではあったが
    私はそれをきれいだと思った
    ああ覚、今もくれんの花が空に突き刺さり
    哀しい肉のように咲いているど
    阪和線富木駅南一番踏切り
    枕木に血のりにそまった頭髪が揺れる
    迎えに来た者だけが壊れた生の前にうずくまる
    父、母、弟、兄であることなく
    最後まで自分を手放さなかったものの
    孤独にわりびかれた肉体の表白よ
    水の生まれ出ずる青い山中で
    待つのみでいい
    どこへも行くな
    こちら側へももう来るな
    その死は実に無残ではあったが
    私はそれをきれいだと思った
    ああ覚、そうか死を賭けてまでもやる人生だったのだ
    よくぞ走った
    走ったぞ
    無残の美

  • [00:19.55]詩を書いた位では間に合わない
    [00:21.89]淋しさが時として人間にはある
    [00:24.12]そこを抜け出ようと思えば思う程
    [00:26.48]より深きモノに抱きすくめられるのもまたしかりだ
    [00:31.36]あらゆる色合いのものの哀れが
    [00:33.57]夫々の運を持ちて立ち現れては
    [00:35.84]命脈を焦がして尽きるものである時
    [00:38.22]いかなる肉親とても幾多の他人のひとりだ
    [00:51.86]その死は実に無残ではあったが
    [00:56.43]私はそれをきれいだと思った
    [01:00.63]ああ覚、今もくれんの花が空に突き刺さり
    [01:06.89]哀しい肉のように咲いているど
    [01:18.24]阪和線富木駅南一番踏切り
    [01:20.43]枕木に血のりにそまった頭髪が揺れる
    [01:22.65]迎えに来た者だけが壊れた生の前にうずくまる
    [01:25.03]父、母、弟、兄であることなく
    [01:29.97]最後まで自分を手放さなかったものの
    [01:32.08]孤独にわりびかれた肉体の表白よ
    [01:34.37]水の生まれ出ずる青い山中で
    [01:36.70]待つのみでいい
    [01:37.52]どこへも行くな
    [01:38.33]こちら側へももう来るな
    [01:50.69]その死は実に無残ではあったが
    [01:55.29]私はそれをきれいだと思った
    [01:59.62]ああ覚、そうか死を賭けてまでもやる人生だったのだ
    [02:05.87]よくぞ走った
    [02:06.85]走ったぞ
    [02:07.71]無残の美
    [02:09.75]