[00:10.07]もつと澤山(たくさん)逢いにゐらして下さい… [00:15.05]さう口走つた君。 [00:18.22]僕は愛ほしく思ひ、 [00:21.23]大層動じたので、 [00:25.05]前髪の成す造形に神経を奪はれて、 [00:32.23]鍵(キイ)も持たず家を出たのです。 [00:38.01]斯くして、麗しき君の許へ超へていく想ひ、 [00:43.20]抑へました。 [00:45.17]「今日は電車で!」 [00:48.07]壱度乗り換へた頃、 [00:50.18]高まつていく [00:52.22]時めきに負けさうになつてゐる [00:58.17]ことに氣付き始めました。 [01:01.21] [01:03.11]真実は最初で最後なのです… [01:08.10]さう口走つた君。 [01:12.09]僕は思ひ出しつつ、 [01:15.10]聡明な生き方を [01:18.17]鳥渡(ちょっと)真似たいと感じ [01:23.01]颯爽と歩いては、 [01:26.10]キツと厳しい表情(かほ)をしたのです。 [01:31.08] [01:31.19]君を笑はす為に、 [01:34.08]微笑むでゐやうと思ひ、鍛へました。 [01:39.10]「扉(ドーア)の前にて!」 [01:42.02]若しも、此の部屋も無く、 [01:44.15]連なつてゐる輝きが [01:49.10]まやかしであらうとも [01:52.18]僕に恐れなどはないです。 [01:57.03] [02:12.20]君はひと足先に微笑むで、 [02:16.17]幻視を與(あた)へました。 [02:20.15]「こんな僕に!」 [02:23.08]徐(やを)ら、見境も無く慾しくなる [02:28.02]まぼろしは孰(いづ)れ衰へても [02:33.24]僕には美しく見えます。 [02:39.06]君だけに是を唄ひます。 [02:43.21]終わり