[00:00.000] 作词 : 凋叶棕 [00:00.000] 作曲 : ZUN [00:00.00]申の二つ「『仲良し村の八人の仲間たち』」 [00:02.02]原曲:蓬莱人形~Dolls in Pseudo Paradise [00:04.00]『さあ、おいでおいで、はじまるよ。 [00:11.03]ほら、そこの君もそんな遠くで見てないで。 [00:20.13]不思議で楽しい人形劇のはじまりはじまり』 [00:27.95]『仲良し村の八人の仲間たち』 [00:38.03]昔々あるところに 村人皆が仲良しの仲良し村がありました [00:46.55]仲良し村の八人の村人は 貧しい暮らしをしていましたが [00:53.18]それでも八人は皆で助け合い 平和に毎日を [01:01.54]それはそれは楽しく暮らしていたのです [01:06.20]ところがそんなある日の事でした [01:08.87]八人の内 特に皆から好かれていた 一番特別な子が [01:15.42]突然村からいなくなってしまったのです [01:19.57]さあ大変です すぐに村中が大騒ぎになりました [01:25.54]皆は必死にその子を探しましたが [01:28.25]どこをどれだけ探しても 見つかりませんでした [01:33.04]どこへ行ってしまったんだろう 皆途方に暮れました――その時です [01:40.55]八人の中でも 一番よく物に気付く男の子が [01:45.33]村の桃の木に不思議な穴が開いている事に気付いたのです [01:53.04]「きっとあの子は、ここに入ていたに違いない。」 [01:58.10]「そうだ、きっとそうだ!」 [02:01.65]「こうしちゃいられない、追いかけよう!」 [02:06.61]皆 その中へと 入てみることにしました [02:14.57]木の中は 狭く暗い洞窟のようでした [02:22.18]どこまでも どこまでも続いていくようです [02:30.41]つっかえつっかえ ずーと同じような道を進んでいきます [02:38.80]それでも皆 あの子を探すために 一生懸命進んでいくのでした [02:50.21]そうして どれほどの時間が経ったでしょうか [02:55.28]「あ、出口だ!」 [02:58.18]一番先抜いていた 一番幼い男の子が声を上げました [03:07.75]洞窟を抜けると 辺りには不思議な景色が広げていました [03:16.58]ここはどこだろう 皆 不思議に思いました [03:22.80]見たことのない空 見たことのない草木 [03:28.96]見たことのない山々 見たことのない小鳥や動物達がいたのです [03:37.63]そんな不思議な世界に見惚れていると [03:40.54]一番好奇心旺盛な男の子が 声を上げました [03:46.60]「おい、あっちに何か見えるぞ!大きな屋敷だ!」 [03:51.53]それは古く しかし立派なお屋敷でした [03:57.20]近付いて見ると 玄関の前に 小さな靴が一つ落ちていました [04:05.18]――あの子の靴でした [04:08.19]恐る恐る扉に手を掛けます 扉はゆっくりと開きました [04:14.10]お屋敷の玄関に 誰もいませんでした [04:19.03]「おーい、誰かいませんか?」 [04:21.88]一番賢い男の子が声を上げます けれど 返事はありませんでした [04:29.38]けれど このお屋敷の中にきっと あの子はいるに違いないのです [04:35.42]皆 このお屋敷を探そうと思い立ちました――その時です [04:44.30]「あれ?なんだろうこの匂い…」 [04:48.71]皆どこからか 美味しそうな匂いがしてきている事に気付きました [04:55.37]匂いの先を辿ると そこは大きな食堂でした [05:01.77]食堂の大きなテーブルには 八人分の食事が並べられていたのです [05:10.25]お皿には 油煙を立てる美味しそうなベーコンエッグ そしてコーヒー [05:17.98]皆 お腹が空いている事に気付きました [05:22.94]「僕達は八人、そして食事も八人分。 [05:27.19]丁度いい、ここでご飯を食べていこうじゃないか。」 [05:31.79]一番大人びた男の子がそう言うと 皆席に着いて 料理を食べ始めました [05:38.90]けれど一人だけ 料理を食べなかった男の子がいました [05:45.22]その子はとても臆病で [05:47.53]皆が何だかいけない事をしているような気がしたからです [05:52.64]それで男の子は 食堂から出ていてしまいました [06:01.51]でもやっぱり 男の子は怖がりでした [06:06.43]お屋敷の中を 一人で探すことはできずに [06:11.73]少ししてから やっぱり食堂へと 戻っていくことにしたのです [06:19.20]――ところが 食堂の中には誰もいませんでした [06:25.32]食事をしていたみんなはいません 料理はありません [06:31.38]「おい…誰かいませんか!?」 [06:35.07]堪らず男の子は 声を上げました [06:39.03]そうすると 小さな声が聞こえてきたのです [06:44.39]「やーこんにちは!僕はね、とっても愉快なピエロさ!」 [06:49.73]小さなピエロが テーブルの間に立っていました [06:54.33]片足が裸足の 不思議なピエロです [06:58.95]「あなたは誰?み、みんなはとこに行ったの?」と 男の子は聞きました [07:07.66]「だから僕はピエロ!一番愉快なピエロさ!ねぇねぇ、ご飯はどうだった? [07:15.56]美味しかったかな?君達のために用意したんだよ!」 [07:20.63]男の子はどう返事をしていいのか分からず 困ってしまいました [07:27.25]「なーにどうしたの?まさか食べてないのかい?」 [07:32.01]「そ、そんな事ないよ、美味しかったよ!」 [07:35.43]慌てて男の子は そう返しました [07:39.89]「ふーん、そうなんだ…ねぇねぇ、ここはとっても素敵なとこだろう? [07:47.57]ずっとここで楽しく暮らそうよ!」 [07:51.30]あの子 皆も どこに行ってしまたんだろう [07:56.86]だんだん男の子は 怖くなってきました [08:01.94]「僕、もう、帰らなきゃ…」 [08:06.50]気付くと 男の子はそう口にしていました [08:12.32]「帰る?なんで?君はここにずっといるって、そうみんなも!」 [08:21.45]「い、嫌だ!僕は帰るんだ!」 [08:25.28]男の子は叫び 食堂から出ていこうとしました――その時です [08:34.62]「なんーだ、お前もあいつらと同じで、嘘つきなのか! [08:41.05]嘘つきはな――こうしてやるよ!!!」 [08:47.73]そう言うと ピエロの姿が見る見るうちに大きくなる [08:51.10]大きな 黄色の髪をした怪物になったのです [08:54.81]ビックリした男の子は 大急ぎで逃げ出しました [08:59.45]ああ ここはなんて恐ろしいところなんだ [09:03.12]後から黄色の髪の怪物が追いかけてきます [09:06.39]男の子は走りました 息を切らせて走りました [09:11.36]森を走り 森を抜け 洞窟へ やってきたあの洞窟へ [09:16.43]後ろから追いかけてくる 足音を聞こえます [09:20.04]走ります 無我夢中で走ります [09:23.91]恐ろしい唸り声が聞こえます 目を閉じて 走りました [09:29.33]どこかも分からず 真っ暗の道を ただただ走って行きました [09:40.09]気が付くと そこは桃の木のそばでした [09:46.36]あれは夢だったのか 男の子はそう思いました [09:51.94]桃の木には 穴なんてなかったのです [09:56.62]男の子は 皆を探しました [09:59.88]けれど 誰ひとり見つかりませんでした [10:04.14]男の子が途方に暮れていた――その時です [10:10.01]「ねぇ、どうしたの?」 [10:12.74]男の子に声を掛けたのは 探していたあの子でした [10:17.75]「とこに行ってたの?探したんだよ。」 [10:21.96]男の子はそう聞きました [10:25.38]「どこって、最初からここにいたのよ? [10:30.08]それよりほら、これ見て。」 [10:33.75]その子の手には 六つの綺麗な宝石が握られていました [10:43.18]こうして 二人だけになってしまた仲良し村の二人は [10:50.49]その宝石を売ったお金で 前よりも豊かに [10:56.91]そして、前よりもずっと幸せに、暮らしましたとさ [11:03.48]――おしまい。 [11:11.66]『はい、お話はこれでおしまい。 [11:17.26]ん、どうしたの君?そんなにじっと見ていて。 [11:24.08]え?この人形達が、どうやって動いてるかって? [11:31.20]ふふん、それはね、ひ·み·つ』